借景 というと古都の寺院の優れたお庭を思い浮かべるかもしれません。 遠景の景色を取り入れて近景の庭と一体化させ奥行きのある庭とする、古来よりある日本の造園の技法ですね。京都に暮らしていた学生時代に、私が最も好んでしばしば訪れた洛北の円通寺のお庭はその優れた例です。背景に広がる雄大な比叡山をお庭の垣が水平に区切り、そして何とも言えない間隔で立つ樹木の幹の垂直が比叡山を分割します。 (円通寺のお庭はこちら) そのような雄大な借景ならずとも、身近なところで住宅のお庭でも借景はとても有用な手法です。 下記のお住まいの計画では、土地選定からご相談を受けました。候補となる2-3の土地を建築主の方とご一緒に見て廻り、お伺いしたご要望に対してそれぞれの土地の現地で、ここではこのような建て方が可能です・・・とご説明して回ったのですが、その中の一つを私は一目見たとたんに気に入って、その地を強くお勧めしました。その土地のお隣に広いお住まいがあり、そこに立つ大きな樹木に魅せられたのです。中庭のある住まいをご希望でしたので、自らの中庭と隣家の大樹の双方を楽しめる住まいに!と、その場で間取りを思い描き、そしてほぼその通りに実現しました。
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(隣家の大樹 手前の縄張りが建築地)
居間の片隅に少し陰になるように設けた書斎のコーナーからは、左手に中庭が、そして右手には浴室用の坪庭越しに隣家の大樹が望めます。中庭というどちらかと言えば閉じた形式だけにとどまらず、拡がりのある眺望を得ることが出来ました。
皆様も敷地の外にも目を向けて、頂けるものは積極的に頂いてしまいませんか?
![](https://static.wixstatic.com/media/ddd5b1_af9e02400c0044f09de8c9dd88f886ef~mv2.jpg/v1/fill/w_640,h_840,al_c,q_85,enc_auto/ddd5b1_af9e02400c0044f09de8c9dd88f886ef~mv2.jpg)
(デスクスペースから浴室庭越しに見る隣家の大樹)