今回のテ-マは
「街並みに配慮した外観と屋根」についてのお話です。
今も残る日本の街並みの美しさに瓦屋根の重なりがあります。
雨の多い日本の屋根は勾配を取って早く雨水を流す工夫をしてきました。
又、軒を深くすることで地面からの跳ねや日差しを防ぎ、建物を守り、軒下という内部と外部の中間に快適な空間を作り出すことで、より自然と融和する建物になっています。
間口や高さが違えど同じ瓦屋根で勾配や軒下が続く街並みは、個々の家が一体となって美しい景観を作り出し、地方によって材料や様式の異なった独特の景観が特徴となっていることもあります。
こうした統一された街並みの景観は、其処に暮らす住民の意識を高め、物や人間関係を大切にする精神性にもつながり、暮らしを豊かにすることにも繋がっているように思います。
神戸市御影に建つ「青霄庵」はそのような思いを込めて設計した住宅です。
東側に低層のマンションが建ち、ボリュ-ムのある平面そのままに大屋根の勾配屋根を掛けると圧迫感や日陰などお隣に差しさわりが出てしまいます。
外観は近隣に出来るだけ圧迫感を与えないようにする配慮と、内部空間を損なわずに軒や最高高さを押えるために、日本建築にはないデザインなのですが、R勾配の屋根をいくつか多層に掛けることにしました。
木造でR屋根を作るのは、梁、母屋、野地板などもRにしなければならず、設計と施工には課題が多くあります。
屋根と屋根がぶつかる谷の部分、棟やケラバの納まりなど、施工技術力も求められます。
梁は集成材、屋根材はステンレス焼付一文字葺き、腕の良い板金屋さんに助けてもらい、柔らかさを感じさせながら夏の日差しを遮る深い軒を実現することができました。
幾重にも重なった屋根が日本の美しい風景を形づくっていますが、そうした外部空間への働きかけを積極的に実現できたと思います。
閑話休題、青霄庵とは禅の言葉、「平歩青霄」からとったものです。
青く澄み切った空を何事もなく歩くこと、すなわち何事にもとらわれない自由闊達な境地を指しています。
文責 坪田眞幸